東京高等裁判所 昭和53年(ラ)1120号 決定
抗告人らは、本件破産宣告決定が抗告人労働組合の団体交渉権を否定し、あるいは従業員の勤労の権利を侵害し、憲法二五条、二七条及び二八条に違反すると主張するが、すでにみたとおり会社再建の見込がないのであるから、事業は解体せざるを得ず、その場合賃金債権者である従業員を含めて全ての債権者のために公平に財産を分配するために破産宣告がなされるのであるから、むしろ破産宣告は労働の果実である賃金確保に資するものであって、従業員の勤労の権利を害するものでないことが明らかである。また破産の原因たる事実があって会社再建の見込がない場合には、いたずらに事態を放置することなく、特別の事情がない限り、ただちに厳格な清算手続である破産手続により公平に各債権者を保護することが必要であって、同趣旨の規定は、民法八一条、商法一二四条三項、四〇二条、四三〇条一項、会社更生法二三条、和議法九条にみられるところである。従って、右のような場合に、労働組合が会社との団体交渉を通じて会社の破産の申立てを抑制することは、法の趣旨にむしろ背く結果となるのであって、抗告人らが、右会社の会社更生手続申立ての取下げと本件破産の申立てについて団体交渉をなしえなかったことを非難するのは、当を得ないものといわなければならない。しかして、抗告人ら従業員の権利等は、破産手続上これを主張することによって守られるべきものであるから、右のように解しても憲法に反しないことは明らかである。
(渡辺 糟谷 浅生)